sinner
昨日までぼくの暮らすアパートの部屋の隣に、希薄な関係となった男と暮らしていて、昨日引っ越していった彼女。
彼女の勤務先と近いのだと、この店に異動になって気付いたのはすぐのことだった。当然か。もうその頃には、報われない感情があったんだから。
……当然、彼女がこちらに気付くことはないけれど。それは今日も変わらずで。
荷解きで疲れていないだろうかと心配だけをしていたけど、どうやらそれは杞憂だったみたいだ。高めのヒールを履きこなし、彼女は歩いていった。
変わらない華奢な身体の後ろ姿を見送りながら、その中身の綺麗な背中を思い出してぞくりとする。仕事中なのになんてことを。
もう、諦めなくてはいけない……んだよな。
はっきりと言われたけど、その言葉たちの中には揺れながらのものもあった。
どちらにしろ、未来を望まれてはいなかった。
そうであろうと伸ばす姿勢を、大切にしたいとも思う。
ああ
けど、まだ――。
いつまでこんな、と途方に暮れる。もう、ベランダ越しに大人しくいられた頃の気持ちには戻れない。かといって、その手を強引になんて出来るわけもない。
いつか醒めるのを待つか。
こうして、毎日のようにその姿を見つめられる状態は、自ら招いた今となっては混乱の一方で。どうしたらいいのかと袋小路に迷ったまま、そんな同じ日常をぼくはずっと過ごす。