sinner
「会えたら、こうするって言ったはずだよ。君だって頷いた」
「って、……いつかなんて、ないと思ってた」
「言ったろ。ぼくは一途で諦めが悪くてしたたかだって。――もっと普通の出逢いかたが良かったかな? ドラマチックなほうがおちてくれるかなと計算したんだけど」
全くドラマチックじゃない馬鹿なぼくの思考力は低下の一途を辿る。こんな情けない心情を知られたら逃げられるかもしれないと恐れながら、ただただ話の流れを止めないで彼女を手に入れることしか頭になかった。
「計算って、言っちゃったら計算じゃない……」
逃げられたくない。
「うん。これも計算。君にはこうしたほうが効果的かと。……それとも、あのことがあるかぎり、ぼくは一生君には添えない? どんな再びの出逢いをしても、もうぼくには……、好きになってもらえる要素はないのかな」
諦められるかはわからないけど。
近くで囁くと、身じろぐ彼女の揺れた髪が肩から流れ落ちてきて、その光景があまりにも綺麗で、見蕩れてしまう。
「ゆっくりで構わない。待つのはどれだけでも。だから、今、思ってること、ちゃんと聞かせて」
「あっ……」
「今度はないかもしれないから」
でも、ぼくはそれでもずっと待ってしまうかもしれないけれど。
これで、本当にさようならかもしれない。今度こそ心底嫌われてしまうかもしれない。でも、もう、伝えてしまおう。だって、こうやって会ってしまったんだから。
あの日よりは遠く、けれどただの元お隣さんよりは近くに寄ると、もう煙草はやめていたのだとわかる、ふんわりと可愛らしい、彼女自身だけが香った。