sinner
――――――
――――
――
それからすぐに、事態が進展したわけじゃない。
そういうことには不器用な彼女と、実は器用でないのだと懺悔するまでもなく早々に理解されてしまったぼくは、ゆっくりと、友達のような関係を保っている。
いや。ぼくは変わらず同じ気持ちを抱いていて、どうにももどかしくはなるけど……。
失くすのが怖い人から、ぼくはいつか愛しい人へと昇格出来るのだろうか。水浸しの再会から現在、そんな位置に近いのはどうやらぼくしかいないんだけどと、週に一度花を買いに来てくれたときや時々一緒にする食事、並んで歩く道すがらで調査はしている。
怖いのは、きっと失くしてしまうかもしれないと想像するぼくにだけじゃないんだろう。過去の恋愛の傷は、彼女を苛まずにはいられない。
ぼくとの間にあったことだって、やっぱり考えずにはいられない。
いつまでも待つから。なんて物分かりいいこと言っておきながら、いずれ与えられると期待してずっとお座りする忠犬のような男が傍にいるのは、彼女にとって居心地はどうなんだろう。……自分からやめられないのが難点だ。
恋人の距離ではないけど隣にいるぼくを嫌がらない彼女は、時折、何か言いたげにしては口を結んでうつむく。
悲しませていないかな。苦しませてはいないだろうか。それを推し量るけれどわからない。
思いながらも離れられず、半年以上もそんな日々を、ぼくたちは過ごしていた。