sinner

 
そんな彼女の素直で隠すことの出来ない表情を見て、後悔と愉悦を覚える。
つくづく最低な男だと自身を責めながら、けれどそれらは消えてくれない。


そうして――


「ぼくは好きな人にだけ花を贈ると決めているんです」


絡まる腕から逃れたあと、宣言する。
その相手が自分だと疑わない女性客から距離を大袈裟にとった。


時刻は閉店時間を過ぎていて、事前に伝えてあったとおり、今日のぼくの仕事は終了となる。
アレンジにリボンをかけて仕上げを施した。出来上がったのは、ピンクの胡蝶蘭をメインとしたもので、両手で抱えると、それはまるで花嫁のブーケにも見えるように作った。ぼくは完成したそれを持って、来てから言葉ひとつ発さず入り口付近で立ったままの彼女へと歩いていく。


良かった。帰らないでいてくれて。


今日は跪くことはしない。恐る恐る見上げてくる上目遣いの彼女にときめきながら、ぼくとの間にある空間にアレンジした花束を挟む。


「誕生日おめでとう」


「っ」


「一年前、ちゃんとおめでとうを言えなくてごめん。あの時は困らせてばかりだった」


「そんなこと……っ」


「受け取ってくれる?」


緊張するお互いの間にある花は、ぎこちない動きで貰われていく。花束に埋めるように顔を近づけた彼女は、睫毛を伏せて、ありがとうと伝えてくれる。
そんな可愛い姿を目の前にし、加えて、さっきまでの彼女の表情に我慢が効かなくなり、もうひとつのプレゼントを押し付けた。


「ついでに、ぼくのことも貰ってくれないかな?」


「っ!!」


「って、ずっと思ってるよ」



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