sinner

 
はたして、驚かせることがマンネリ解消になるのかは不明だし、そもそもマンネリなのかもはっきりしていなかったけど。塀に隠れてしまっては、普通に出ていけば余計おかしくなるだけで。


「大丈夫。ぼくは隠れたまま出ていかないから」


「当然です」


「それじゃあ、荷物はもう渡しておくとしよう」


「あっ、ありがとうございました。助かりました」


一旦、荷物は足元にまとめて姿勢を正したのは、緊張か。


少なからず、心が弾む。


付き合い始めのころは、こんなこともしていた。それはお互いに。


こういう意味のない行為ひとつで幸せになったり愛しさが増したり――どんなことでも、彼からのものは許容できていたんだ。


確実に、好きだったから。


そんな気持ちをもう一度。


わたしは、忘れてしまっているだけかもしれない。
無くして、しまったのかもしれないけれど。




でももう一度。


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