PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
カバンを胸に抱えて走り出す。
もともと足が遅いうえに、カバンが重い。
すぐに息切れしてしまう。
それでもわたしは伊呂波先輩へと走る。
わたしが追い付くより先に、伊呂波先輩がわたしに気付いてくれた。
軽く右手を挙げる仕草が、キラキラしている。
「おはよう」
爽やかな笑顔の先輩の前で、わたしはやっと足を止めて息を整えた。
「お、おはよう、ございますっ」
「そんなに走って、どうしたの? 何か急ぎの用事?」
「あ、いえ、その……」
伊呂波先輩を見付けたから思わず走ってきました! って言えたらいいんだけれど。