王道恋愛はじめませんか?
「…そっか。みのりさんの好みに合ったもので良かった。」
『!』
今度、俺の言葉に驚いたのはみのりさんの方。
なんだか今日は、お互いに驚いたり照れたりと忙しいみたいだ。
「…どうかした?」
『あ、いえ…。まさか、名前で呼ばれるとは思っていなかったので…』
恥ずかしがっているのか、声も小さく、俺から視線を逸らして俯いてしまった彼女に、俺は焦ってしまう。
やっぱり、いきなり下の名前で呼ぶのはまずかっただろうか。
常識的にはまずは名字から呼ぶのがイイのだろうけど、そこまで頭になかった俺は当たり前のように彼女の名前を呼んでしまった。
しばしの沈黙が続く中、彼女がパッと顔を上げて、俺はまた小さく驚いてしまう。
『あっ、別に変な意味じゃなくてっ…!その、私の名前を憶えててくれたことが嬉しくて、』
「ありがとうございます」と頬をほんのりピンクに色づけて、可愛らしいえくぼのある笑顔を向けられたもんだから、俺の心臓は爆発寸前だった。
「…憶えてるさ、みのりさんのことなら。」
『えっ…?』
つい、本音が口を滑らせてしまった俺に、みのりさんが小さく固まったとき、みのりさんの携帯電話が鳴った。
それは、控室でも鳴っていた一昔前の携帯電話だった。