この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
ってもうソファーで寝息たててるし
私もシャワー浴びて寝よう
翌朝、私は重くて目が覚めた
「ん~ってどいてよ」
「寒い」
なんで寝室に忍び込んできて私のベッドの上で丸くなってんだか
「出て行って」
とりあえず寝室から追い出すことには成功した
着替えを済ませてリビングに向かうと換気扇の下でタバコをふかす瑞希と目があう
「おはよ」
ぞんざいに言ってポットでお湯を沸かす
その間にメイクをしてこようとバスルームのほうに向かおうとして瑞希の足に躓いた
「どんくさ」
「そんなとこでタバコなんて吸ってるからでしょ
第一、禁煙わかった?」
「俺の勝手だろ」
ソファーに移動する瑞希をみながら私はバスルームに向かう
メイクをして戻ってみるともう眠ってしまったようだ
朝ご飯にトーストを食べながらコーヒーを飲んでいると気になるニュースがとびこんできた
新宿の雑居ビルで暴力団幹部が殺された
「まさかね」
ばからしくなりテレビを消して家を出た
玄関の鍵を閉めて外に出る
バスに乗って駅に向かい山手線の混雑具合にあきれながら会社に向かった
会社のエントラスで後ろから声がする
「麻衣おはよ」
「おはよ」
「どうしたの?」
「どうもこうもないよ」
「なんで?」
「話しは後で」
がさごそと鞄をあさってみたが社員証がない
ヤバい···
「美沙ごめんね先に行って」
「うっうん私じゃまだもんね」
へっ?じゃま?
恐る恐る首を巡らすとフルフェイスのいかにもな人が社員証を持って立っていた
「瑞希?」
ヘルメットをとるとやっぱり瑞希だ
「ありがとうは?」
ありがとうと言いかけてキスされた
突き放さそうとすればするほど舌を突き入れてくる
「ちょっ···ん」
メンソールの苦い味
「なに欲しがってんだよ」
ぴんとデコピンをされて慌てて離れた
欲しがってない
「周りみてみな」
カラカラと笑う瑞希が恨めしい
「もう早く帰ってよ」
「はいはいご主人さま」
誤解を招く言い方をしてくる
瑞希に伸ばした手は軽くかわされる
「もう」
「っ···」
えっ···まだどこか痛むの?
顔をしかめた瑞希を見る
「ねぇ大丈夫?」
「大丈夫たいしたことねぇよ」
「瑞希あとでちゃんと話して」
「なにを?」
「はぐらかさないで知りたいの瑞希のこと」
「優しくされたら離れなくなるよ俺な~んて
んなのことよりいいのか時間」
「あーっ」
私は瑞希に小さく手を振り歩きだした
あんな風にキスしたのはいつぶり?
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