この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
朝になって律からの着信
「悪かったな昨日」
「ぜんぜん大丈夫」
「寂しくなかったのか?」
「うんまあね
忙しいからもうきるねじゃあね」
「誰かと一緒?」
「あっうん友達」
「なんか俺と話したくないみたいな言い方」
「そんなことないし」
「ちょっと顔だせ」
「ムリ」
けっきょく律には逆らえずこっそり菅さんの部屋から出てコンビニで朝ご飯を買ってタクシーで律に会いに行った
律は病室から窓の外を眺めていた
「あのねこれ」
ぱんと手で袋を払いのけられた
「なに機嫌とろうとしてんの?
つーかシャワーぐらい浴びて来いよ」
「あのね」
「男といたろ」
「うっ···」
「それでよくのこのこ来れたよな感心する」
「律」
「はあ?おまえが呼ぶのは俺じゃねぇだろ
菅さん菅さんって言って抱いてもらえよ
そうやって仕事にすがりつくのもどうかと思うけど」
「違う」
ふわっとまた律が欠伸をした
手を伸ばしたのはベッドのサイドテーブルにある薬
「睡眠薬」
「えっ···」
「寝れないから貰った」
「···」
「おまえが心配だって言ってんだよ
つーか点滴はずしてもらうからそれ押して
明日には退院らしい」
律の言うようにナースコールを押して看護婦さんが来るのを待った
「律くんおはよう」
「おはよう湊さん」
入ってきた看護婦さんに笑いながら言う律
本当に人なつっこい犬みたい
「やっと解放される」
律はそう言って先ほどの袋を拾いあげた
「食べないんじゃ」
「おまえに罪はあっても物に罪はない」
「まあそりゃそうだけど」
言ってるそばから律はシュークリームを食べだす
「うまっ」
食べてるときの律の顔すごい好き
優しい笑顔も
年相応それより下に見られるのもわかる気がする
「律ごめんなさい」
「それ取って」
サイドテーブルのコップを指差す
可愛い犬のマグカップ
「可愛い」
「だろ」
「律って24なんだよね?」
「免許みたろ」
「まあそうだけど」
「私とつきあったら大変だね」
「なんで?」
「なんでって」
「好きならいいじゃん」
「だって仕事辞めたら···」
そこまで言いかけると律はにっと笑う
「守ってやるから心配すんな」
その笑顔反則でしょ
そもそもお金なんてあるわけないでしょ
「律だから」
「最初からきめてかかるとよくないよ」
律はまたふわっと欠伸をする
「じゃあどうするの」
「じゃあ逆に俺はどうやって暮らしてたでしょうか」
「あっそういえば」
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