あなたはわるい人ですか?
「今日は寒いね」
自分がしていたマフラーを、惜しげもなく私にかけてくれる。こんな人に裏があるはずない。夕食は彼がレストランを予約してくれていた。そこでいろんなことを話す。先週ショッピングモールで買った食器のこと。今週会社であった嫌なこと。小説のことには触れない。ピックハンマーのことにも。婦女暴行事件のニュースにも、触れない。
「へぇ、そうなんだ」
何を話しても笑って返事をしてくれる。私たちはうまくいっているはずだ。何も間違っていない。だけど気付いてしまった。
目が笑っていない。
予感が加速する。
もしかしたら久瀬さんは、
もしかしたら。
ものすごく、悪い人なのかもしれない。
「この後どうする?」
食事が終盤に差し掛かり、グラスの中のワインも残りわずかになった頃、タイミングを見計らったように彼は訊いてきた。
「あー……、今日は、もう……」
自分がしていたマフラーを、惜しげもなく私にかけてくれる。こんな人に裏があるはずない。夕食は彼がレストランを予約してくれていた。そこでいろんなことを話す。先週ショッピングモールで買った食器のこと。今週会社であった嫌なこと。小説のことには触れない。ピックハンマーのことにも。婦女暴行事件のニュースにも、触れない。
「へぇ、そうなんだ」
何を話しても笑って返事をしてくれる。私たちはうまくいっているはずだ。何も間違っていない。だけど気付いてしまった。
目が笑っていない。
予感が加速する。
もしかしたら久瀬さんは、
もしかしたら。
ものすごく、悪い人なのかもしれない。
「この後どうする?」
食事が終盤に差し掛かり、グラスの中のワインも残りわずかになった頃、タイミングを見計らったように彼は訊いてきた。
「あー……、今日は、もう……」