あなたはわるい人ですか?
久瀬さんは目を丸くしたまま表情を少しも変えない。かと思えば、視線を上にあげ、うーん、と唸りはじめ、枕に顔を埋め黙ってしまう。黙られると不安だ。
「ど、どっちなんです……?」
「いやぁ……どうなんだろう。そんな極悪人てことはないけど……、完璧に良い人かと言えば、そんなわけはないし。嫌なところも普通にあるよ」
「はぁ」
安堵の予感。
私はもしかしたら、すごく馬鹿だったかもしれない。
「映画館でね、初めて会ったでしょ、私たち」
「うん」
「あの映画って、あんまり人入ってなくて席空いてたじゃないですか。隣の席だったのって、たまたま?」
「それはたまたまですよ」
「ですよね」
「でもほんとのところ言うとね……」
「え」
予想外に出てきた「ほんとのところ」にどきりとする。
「……やっぱやめとこうかな言うの」
「だめですよ! 言ってください」
久瀬さんはバツが悪そうな顔でちらりとこちらを見た。今日の彼はなんだか煮え切らない。