あなたはわるい人ですか?
「直前にドタキャンされたんだよ。あの日は彼女に振られた直後だった。全然興味もない映画を、彼女が観たいって言うからチケットを買って待ってたんだ。そしたら電話で別れようって言われて。だから、ほんとはあのとき泣きたいのは俺のほうだったんだよ」



殻がぽろぽろと剥がれ落ちていく。決して不快ではない感覚。優しく脆い部分が剥き出しになっていく。そこに闇はひとかけらもない。



「久瀬さん」

「ん?」

「彼女、って言うのはやめてください。その、今の彼女は……私なので」

「ほんとだ」



ごめん、と笑って私の頬を撫でた。その手を取る。



「ホームセンターに行ったとき」

「うん」

「買ってたやつ。あの、ハンマーみたいな」

「ピックハンマー?」

「……それです。それ、何に使うんですか?」

「話聞いてなかったな?」



むっとした顔。



「鉱石が趣味だって話しただろ」

「……聞いたような、聞いてないような?」

「上の空だなーとは思ってたけど」



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