あなたはわるい人ですか?
だって浮かれていたから、とはさすがに恥ずかしくて言えなかった。趣味は鉱石。ピックハンマーは、凶器じゃなくて彼のおもちゃ。
少し拗ねた久瀬さんをつつく。
「久瀬さん久瀬さん」
「なに」
「もう一つだけ気になっていることが」
「もう今日はなんでも訊いてくれ」
観念したような笑顔。こんな顔もするんだな、と嬉しくなる。
「私が電車を乗り過ごしそうになった日に」
「あぁ」
「起こしてくれましたよね」
「うん。爆睡してる人がいるなーと思ったら高坂さんで驚いた」
「どうして私が、あそこの駅で降りるってわかったんですか?」
「定期だよ」
「え?」
「定期。鞄に下げてた通勤定期でわかった。ほんとはもっと前の駅から気付いていたんだけど、熟睡してたから」
「え、あぁ……」
定期ね。
定期か。
そっかぁ。
「見つけたときは嬉しかったよ。もう、会えないと思っていたし。でも……。あの日見つけられなかったら、理由作ってメールしてたかもしれないな」