あなたはわるい人ですか?
「私、小説家なんですよ」

「えぇ?でもOLって……」



耳元で驚く声がこそばゆい。



「駆け出しだから兼業してて。ゆくゆくは小説家として生きていきたいんです」

「知らなかった……」

「それにしては、ぬくぬくと生きてきました。苦労とかどうしようもならなさとかをほとんど知らないで。明日に希望を持てない、みたいな経験もなくて」

「それでいいんじゃないか?」



顔をあげると至近距離で目が合った。



「未来に希望の持てない人の描く物語は、いかがなものかと思うけどなぁ」



なるほどなぁ、と思ってしまった。



「久瀬さん」

「なんでしょう」

「幸せです」

「それは……嬉しい。俺も、幸せだ」



他人の不幸は蜜の味。幸せなんてちっともおいしくない。そんなことはわかっている。




それならば、おいしい幸せはどうすれば創りだせるだろう?




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