王子な秘書とシンデレラな御曹司

「痛いって」

「『痛い』じゃないわよ。ここで何をやってんのよ!」

さっきまでの可愛い顔はどこ行った?
市橋理香は怖い顔で私をにらむ。

「常務に御曹司の教育を頼まれたの!」
そうでもなきゃ
こんな場所に来ないわよ。
誰が好き好んで来るか!

「話は聞いてる!あんたみたいな一般平社員がこのフロアに来るなんてゾッとするわ」

前言撤回
絶対コイツには頼らない
頼りたくない。教えてもらいたくない。

「岸本敏明様は完璧な御曹司様で、我が社の後継者。そして秘書は私」

腰に手を当て理香は高笑い。

ちっくしょー妙に悔しい。
でも理香が居るなら私は必要ない。
上の方でブッキングしたのだろう。

総務に帰れるラッキー。
もう昨日の午後からすんごく心配でグッタリだったよ。
こんな結果か。
あーぁ疲れたけどよかった。
ミッションは理香にお任せ。
おつかれさまー。総務に帰ろう。よかったよかった。
ホッとしていたら

「あなたの相手は別でしょ!」って怒られた。

え?別?
ザワザワと胸騒ぎ。

「最初から勝ち目はないけどね」

「何よそれ」

どーゆーこと?
一歩踏み込んで聞こうと思っていると

何やらガタガタと耳障りな音が聞こえてきた。
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