王子な秘書とシンデレラな御曹司
扉の外の私の気配に気づいたのか
その男性は
私に手招きをする。
私は彼に魅了されたようにフラフラと部屋に入った。
そこは昨日お邪魔した常務室より広く
空の青さと遠くまで見える景色が素晴らしく
飛行機雲がスーッと流れている。
スーツの上着をソファに置き
ワイシャツ越しに鍛えられた身体を感じた。
「君が秘書?」
冷たい言い方が気になったけど
海外で仕事をしてるとビジネス的になるのだろう。
その男性は私の前に立つ。
背が高く
短めな髪をジェルで流し
目は涼しげで切れ長
鼻は高く
薄い唇が色っぽい。
隙のないビジネスマン
若いけど重役オーラ
「コーヒーをブラックで入れて。それから専務と打ち合わせが午前中にあるから時間の確認」
もう仕事?
名乗りもせずに?
てか専務?常務じゃなくて?
「俺に見惚れる前に動け」
ニヤリと笑う。
てか俺様?
俺様御曹司?
どう動いていいのかわからず、ためらっていると
「ちょっと何をやってんのよ!」
甲高い声が部屋に響き
振り返ると秘書課の同期
市橋理香がそこに居た。
「敏明様申し訳ありません。平社員が紛れ込みました。本当に申し訳ありません。秘書は私です」
明るいピンクのワンピに薄いニットのカーディガン
つややかな巻き髪の同期は男性に極上の微笑みを浮かべて
「追い返してからコーヒーお持ちします」と、可愛く小走りでやってきて、私の手を痛いほど掴んで廊下へ連れ出した。