王子な秘書とシンデレラな御曹司


定時になったけど
少しだけ残業をして会社を後にする。

寒い。
コートの襟を立て
ビルの隙間から
冬の星座を確認したいのだけれど
街灯とクリスマスのイルミネーションに邪魔されて、本当の星が見えない。
街の中で飾ってある
偽物なモミの木でキラキラしている星しか見えない。

偽者な秘書にはピッタリか。

ふらふらと
あてもなく歩いてしまう。

子供の頃は大好きだったクリスマス。

一緒に過ごす人が居ない今

クリスマスが悲しすぎる。

健とは
ただの同期に戻ってしまったし

今年のクリスマスはおひとり様かな。

すれ違う人達みんなが
幸せそうに見えるのはなぜだろう。

誰もいない部屋に戻りたくなくて
カフェに入ってコーヒーなどを頼むけど
副社長のいれるコーヒーが美味しすぎて、他で飲んでも物足りない。

あ、秘書をクビになったら
あのコーヒーも飲めないのか
当たり前の事を今さら思って苦笑いしていると

テーブルに置いていたスマホが震えた。

表示は副社長。
勤務時間外の電話は初めてだった。

どうしたんだろう
緊張しながら手にすると『雅さん?』って、いつもの優しく柔らかい声が耳に届いた。

『今、お話して大丈夫でしょうか?』
会社での機嫌悪さとは逆に、ゆっくり丁寧に話し掛けてきた。






< 101 / 245 >

この作品をシェア

pagetop