王子な秘書とシンデレラな御曹司
「大丈夫です」
声を落として返事をする私。
『お出かけでした?ご自宅に?』
「今、カフェでひとりコーヒー飲んでます」
そう返事をしながら
ひとりってワードが妙に寂しく浮いた気になったけど
『どこのカフェですか?美味しいですか?種類は沢山ありますか?』
電話口の相手は気にしてなさそうだ。
「普通のブレンドですが。何かありましたか?お仕事ですか?」
勤務時間外の電話なんて緊張するよ
仕事でミスしたかな私。
『いや違うんです。あの……帰り際に、僕の態度が悪かったから気になって……』
年頃の男の子のようにモジモジと返事する副社長。
その様子が目に浮かんで
軽く笑ってしまう私。
「大丈夫ですよ。それを言われたら、私なんて毎日副社長を怒っているから、いつも機嫌悪い顔していて迷惑かけてます」
『そんな事はありませんが』
しばらく
会話が消える私達。
店に流れるクリスマスソングと副社長の気配だけが耳に残る。
繋がってるんだね……って
彼の吐息が伝わってくる。
『雅さん』
「はい」
『高岡さんの件ですが、知らなくてすいません。いつも残業に付き合わせてるけど、用事がある時は帰って下さい。休みも取って下さい。クリスマスも高岡さんと過ごすんでしょう早退していいですからね』
やっぱり誤解してるんだね。
泣きたいような笑いたいような複雑な気持ちが交互する。
「ありがとうございます」
『高岡さんはいい人です。雅さんとお似合いですよ。僕も雅さんに心配かけないように頑張ります。明日よろしくお願いします。今日はすいませんでした』
それだけ言って
副社長は私の返事も聞かずに切ってしまった。
カップに残った冷めたコーヒーを口にして
やっぱり副社長のいれるコーヒーの方が美味しいと確認。
そして
やっぱり私は副社長が好きなんだなぁって
あらためて確認。