王子な秘書とシンデレラな御曹司
お姫様に変身させてくれたお姉さん達に『可愛らしい』『なんて綺麗』と口々に言われ、私はこれが現実とは思えず驚くだけ。
「さぁ行きますよ」
これで終わりと思うなよ……的な雰囲気で清香さんは私の背中を押して歩き出し、またエレベーターに押し込んだ。
「清香さん……あの」
「これからお食事です。専用フロアなので変なお客様はいらっしゃいません。忘年会をゆっくり楽しんで下さい」
「あの……」
エレベーターが停まり
清香さんは私をフロアに下ろして自分はエレベーターの中に残る。
「雅さん。とっても可愛らしいです。綺麗です。素敵な夜をお過ごし下さい」
その笑顔と言葉を残し
エレベーターの扉は閉まった。
ポツンと私ひとり。
どこからかピアノの生演奏が聞こえる。
あぁなんていう曲だったっけ
そう【月の光】だ。静かな綺麗な曲。
クリスマスにピッタリな曲。
ゆっくりとキラキラした月の光に導かれ歩いていると
ひとりの男性がスッと目の前に現れる。
ダークブルーのスーツは襟が細くて洒落ていて
シャツは細かいスクエアの幾何学模様
シルクのタイはピンクだけどよくよく見ると小さなゴーストが斜めに描かれてる。
面白い遊び心。
クスリと笑ってから顔を上げると
澄んだ目をした王子様が優しく私を見つめていた。
「綺麗ですよ雅さん」
「副社長……メガネは?」
「コンタクト頑張りました」
笑って自分の腕を出すので
私は緊張しながら副社長の腕に手を添えて
ふたりは食事の席に向かって行った。