王子な秘書とシンデレラな御曹司
「私だって好きで聞いてるわけじゃありません。盗み聞きなんてしてませんから」
「どうしてそこに立ってるんです?」
「電話が終わったら新年のご挨拶をしようと待ってました」
「あーそーですか。おめでとうございます」
「おめでとうございます!」
大人げない
全然めでたくない会話。
ふたりでムッとした顔で席に着き、仕事開始。
今日の予定は新年の顔合わせの会議からの、重役会議からの、ご挨拶にたくさん業者関係の方がやってくるはず。
忙しいから気合を入れて頑張らねば。
あちこちから回ってきた書類を整理して、副社長のスケジュールを確認して、メールチェックもして、やることが山積みなので優先順位を考えていると、ガリガリガリガリ……いつものコーヒー豆を挽く音が聞こえた。
一定のリズムで心地よく部屋に音が広がり、ふんわりとコーヒーの香りが広がる。
「雅さん」
ガリガリの間に聞こえる弱い声。
「はい」
「ごめんね」
「私もごめんなさい」
すぐ謝る男ってどーよ……私は……好きだよ。
謝られると自分もそれ以上に反省してしまう。
数分後
マグカップが私の目の前に置かれた。
いい香り
目を閉じてしっかり味わう。
酸味が抑え気味でコクがある
そして微かにナッツの風味がする。
「ラテンアメリカのブレンドです。ナッツの風味が特徴で飲みやすいでしょう」
「美味しいです」
素直に言うと副社長は嬉しそうな顔をする。
あなたの笑顔もコーヒーの一部になってます……とは恥ずかしくて言えないけど。