王子な秘書とシンデレラな御曹司

「私だって好きで聞いてるわけじゃありません。盗み聞きなんてしてませんから」

「どうしてそこに立ってるんです?」

「電話が終わったら新年のご挨拶をしようと待ってました」

「あーそーですか。おめでとうございます」

「おめでとうございます!」

大人げない
全然めでたくない会話。

ふたりでムッとした顔で席に着き、仕事開始。

今日の予定は新年の顔合わせの会議からの、重役会議からの、ご挨拶にたくさん業者関係の方がやってくるはず。
忙しいから気合を入れて頑張らねば。
あちこちから回ってきた書類を整理して、副社長のスケジュールを確認して、メールチェックもして、やることが山積みなので優先順位を考えていると、ガリガリガリガリ……いつものコーヒー豆を挽く音が聞こえた。

一定のリズムで心地よく部屋に音が広がり、ふんわりとコーヒーの香りが広がる。

「雅さん」
ガリガリの間に聞こえる弱い声。

「はい」

「ごめんね」

「私もごめんなさい」

すぐ謝る男ってどーよ……私は……好きだよ。
謝られると自分もそれ以上に反省してしまう。

数分後
マグカップが私の目の前に置かれた。

いい香り
目を閉じてしっかり味わう。
酸味が抑え気味でコクがある
そして微かにナッツの風味がする。

「ラテンアメリカのブレンドです。ナッツの風味が特徴で飲みやすいでしょう」

「美味しいです」
素直に言うと副社長は嬉しそうな顔をする。

あなたの笑顔もコーヒーの一部になってます……とは恥ずかしくて言えないけど。
< 147 / 245 >

この作品をシェア

pagetop