王子な秘書とシンデレラな御曹司
クラクラしながら
どうにか壁に手を付き
会議室を出て前に前進。
とんでもない事態になってしまった。
全てが敵。
いや冗談じゃない
冗談じゃないけれど……これは現実。
まず戻ろう
貧乏くさい御曹司を置き去りにして
逃げてしまった私。ごめん。
どこからか『雅王子』って、可愛らしい後輩の声を聞きながら
背中を正して前を向く。
王子が逃げてどうする。
姫を助けに行かなきゃ。
気持ちも新たにエレベーターに乗って重役フロアに到着し、逃げ出した資料室の前に立ちノックをすると
「どうぞー」って軽い返事が返ってきた。
「失礼します」
礼儀正しく覚悟を決めて中に入ったら、御曹司は白衣を脱いで片付けの最中。
「おかえりなさい」
穏やかな優しい声が私を迎える。
ご飯にしますか?お風呂にしますか?
そのまま言葉が続きそう。
「荷物も少ないのですぐ終わりました。竹下さんの荷物が総務から届いたので、僕の机の隣に置いておきました」
資料室にふたつ並ぶスチール机
総務の机の方がまだ立派だったかも
これって新品とはいえないよね
御曹司なのに
こんな扱いをされて惨め。
私が嫌な顔をしたのだろうか
御曹司は「あっ!」って声を出し
「机の位置が気に入りませんか?僕の場所と変えましょうか?」
本気で言われ
慌てて首を横に振る。学生寮での会話じゃないんだよ。
「いえ違います。いいですここで」
副社長とスチール机で並ぶ秘書。
それも景色も見えない資料室
泣けるわ。