王子な秘書とシンデレラな御曹司

「あなたって人は本当に……」
自分の上着を脱ぎ
ネクタイを緩めて本格的にパイプ椅子に座る副社長。
え?帰らないの?
恥ずかしいから先に帰って欲しいわ。

それより
説教が長そうで嫌。

点滴のしていない方の手でコソコソと薄い布団をかけるけど

「雅さん!」って
しっかりそれを剥がされた。

誰か助けて下さい。

「子供ができたと思ったんでしょう」
責めた口調に素直にうなずく。

「僕に黙って、ひとりで悩んでいたんでしょう」
ふたたびうなずく私。

「自分の体調より仕事を優先したんでしょう」
そしてうなずく。

「誰だって怒ります!」

カミナリ落ちました。
いつもと立場が逆ですコレ。

「まずは僕に相談するべきです」

「だって……心配かけたくない」

「そーゆー問題じゃない」

「だって……華子様がいるし……」

「僕の言葉を忘れたんですか?」

「だって……」

「次に『だって』って言ったらクビですよ」

「だっ……」

メガネの奥の目が怖い。
こんな怒った顔は初めてで
しっかり反省する私。
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