王子な秘書とシンデレラな御曹司

あまりにも私達がうるさかったのか「少し静かにして下さい」って廊下から鋭い看護師さんの声がした。

すいません。
人騒がせの上
うるさかったです私達。

しゅんと落ち込んでると
温かい手が私の頬を包み込んだ。

「大丈夫でよかった」
深い深いため息をして
副社長は疲れた顔をする。

心配をかけてしまった。

「ごめんなさい」

「少し寝て下さい。まだ点滴に時間はかかりそうだから」

「はい」
逆らわない方がよさそうだ。
私は静かに目を閉じる。

点滴が効いたせいか
心配事が消えたせいか
お腹の痛みも和らいできて
一気に疲れた出てきたかも

「雅さん」

「……はい」

「赤ちゃん……本当にできてたら、よかったのにね」
オドオドと恥ずかしそうな声が聞こえる。

どーゆー意味だろう
本当にデキてたら副社長が困るでしょう。
華子様がいるんだよ

愛人なる人生を歩むのか私?

もういいよ
少し休みます。

疲れました。

返事もせずに自分の寝息が聞こえるくらいベッドに沈むと、そっと副社長の香りが鼻をくすぐり、柔らかい唇が私の唇に重なった。

懐かしい愛しいキス。

苦しいくらい

私は啓司さんが好きです。

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