王子な秘書とシンデレラな御曹司
副社長は静かに私を見つめている。
「誰かスパイがいるかもしれません」
「映画の世界ですよ」
笑う副社長にカチンとくる私。
「でもこのままじゃダメです。時間がないんです。あちらの不正があるのなら早く暴かないと」
「雅さん」
「このままでは……」
「では誰がスパイなのですか?」
「それは……」
ここの部屋は出入りが多い
私が席を外している時は余計に、コーヒー好きが沢山集まる。
怪しいと言えば誰もが怪しい。
警備室から部長クラスまで
みんな楽しそうな顔でくつろぎにやって来て
趣味の話から仕事の話まで語ってる。
「人を疑うのはいけません」
「副社長」
「それは秘書の仕事ではありません。雅さんには雅さんの仕事があるでしょう」
ズパッと斬られた気持ちになった。
私は私で微力ながら
こんなに一生懸命
副社長の事を考えているのに
悔しい。
副社長はやっぱり
のほほんとした御曹司だ。
世間の厳しさを知らない。
ここは研究所とは違う。
疑うのは嫌だけど
人を疑うのも必要だ。
でも……彼は私の考えを拒否している。
悔しいより
悲しい。