王子な秘書とシンデレラな御曹司
心の中を見透かされるのが怖く
私はもうひとつ用意していたチョコを持ち
副社長の前から姿を消そうと部屋を出ると、追いかけてくる気配。
「雅さんどこへ?」
背中にかかる不安そうな声。
「バレンタインなので社長にチョコを渡してきます」
そう答えて振り返ると驚いた顔をする。
「社長にですか?」
「はい。新年会で倒れてご迷惑かけた私に、果物とお花のお見舞いをいただいたので」
「チョコは僕だけじゃなかったんですか?」
高いトーンの叫びが重役フロアの廊下に響く。
その悲しそうな顔を止めなさい。
「お礼を兼ねて……その……」
別に悪い事してないんだけど
悲壮感溢れるその顔を見ると、なぜか口ごもってしまう私。
「僕だけでいいでしょう」
「そんなワケわからない事を言わないで下さい」
婚約者がいる人にそんな風に言われる筋合いないわ。
華子様と私の目の前で『愛してる』とか言い合ってたじゃない。
「他の人にあげるなんて……」
「そんな言い方する副社長なんて嫌いです。すぐ戻ります」
もうウザったいなぁ。
グチグチ男らしくないぞ
とにかく早く渡して来よう。
急ぎの仕事もあるし。
振り向きもせず社長室に向かったけど
社長は不在。
さりげなく社長室に入ると
秘書課のお局様的ボスがいて、慣れた口調で『記名してそこに置くように』って言われてしまった。
そこには
長く大きな会議用のテーブルが二つあり
チョコが沢山並んでいた。
ハンパないわぁ
このチョコの山。お返しも大変そう。