王子な秘書とシンデレラな御曹司
「本当に家に帰ろうと思ってたんですか?」
さりげなく聞くとコクリとうなずく。
本気かよ。怖いわコイツ。
「システム部に行って小堺さんと話してました」
「どんな話を?」
「雅さんに嫌われた話と、スタートレックはどっちのシリーズが好きとか」
「スターウォーズ?」
「いやスタートレック。僕も小堺さんも昔のシリーズが好きだけど艦長は新シリーズのピカードが好きって一致してたら、澤田さんがやってきてザッカリー・クイントのスポックについて盛り上がって、大島課長が僕はクリンゴン語を話せるって話になって……」
仕事の忙しい時はシステム部に出入り禁止だ。
あそこは我が社のオタクの聖地だわ。
「ザッカリー・クイントって海外ドラマのヒーローズってやつに出てたんですよ。まさか彼がスポックになるとは思いませんでした。あれはマシ・オカが出ていて注目されてましてね。シリーズの三作目には、僕が大好きなプリズン・プレイク……」
「仕事しますよ!」
大きな声で叫んで強制終了!
副社長は寂しそうに自分の席に座り、外した眼鏡を吹きながら「雅さん?」とポツリと私の名を呼ぶ。
「はい」
「雅さんが僕を心配してくれる気持ちは、しっかり伝わってますから」
そう言われ
キーボードを打つ手が止まる。
「ありがとう」
メガネを外したまま私の方を向いて、副社長は私に礼を言う。
綺麗な澄んだ目に惹き込まれそう。
「私も、言い方が悪くてすいません」
素直に謝って手を動かし
仕事に集中するふりをする。
本当は
『言い方が悪くて』じゃなくて
『嫌いなんてウソ。本当はとっても大好き』って
言いたかった。