王子な秘書とシンデレラな御曹司
そんな
バレンタインから数日後の朝。
「おはようございます」と部屋に入るとコーヒーのいい香りが漂う。
寒い朝に幸せな香り。
副社長室という名の資料室は寒い。
フロアの廊下の方が温度高いかも。
狭いから温かいはずなんだけどね。
「おはようございます。今日の豆は雅さんの好きなコナにしましたよ」
癒される優しい笑顔と淹れたてのコーヒー。
今朝はタイミングいいなぁ。
コナはハワイの豆だよね。
気分だけでも南国。
まろやかで後味スッキリで大好きな銘柄。
マグカップにいっぱい入れて欲しいなぁ。
今日はいい日だと感じながら自分の席に座ると
違和感がある。
あれ?
動きを止めて机の上を目でサーチ。
昨日と同じ
パソコンがあって
書類があって
住所録もあって辞典が数冊あって電卓もあって
小さな四角い入れ物にハサミと蛍光ペンとボールペンと、私が会社に入った時から使い慣れてる物があって
同じなんだけど
何か違う。
嫌な予感がする
とってもとっても嫌な予感がする。
左手を伸ばし
祈るように机の引き出しを引くと
引き出しが動き出す。
どうして?
だって昨日は鍵をかけて帰ったのに
どうして鍵が開いてるの?
「雅さん?」
副社長がどこかで私の名前を呼ぶ。
頭の中がガンガンしていて
大好きな人の声も遠く聞こえてしまう。
お願い
お願いどうか
どうか私の勘が外れてますように
心臓をバクバクさせて泣きそうな顔で探すけど
嫌な予感って
どうして当たるんだろう。
「雅さん?」
預かった
三食団子が姿を消していた。