王子な秘書とシンデレラな御曹司
総務課を出て
そのまま打ち合わせに使うような会議室に入ると思いきゃ、部長は重役専用とも呼ばれるエレベーターへと歩き出す。
はぁ?
素直に後に続き
やってきたエレベーター乗り込んで
部長が押したボタンは重役室へと向かうボタン。
え?どこ行くの?
「部長、あの……どちらに?」
「まぁまぁ気にしないで」
焦る私を微笑みでスルー。
「ご用件はいったい」
「すぐわかるから」
ロマンスグレーで部下に優しく
愛妻家で有名な
元ラガーマンの部長。
私の直接の上司は係長か課長なので、この総務統括部長とはあまり縁もない。
ないから逆に
ツーショットが不安でたまらない。
なぜに下っ端の私を呼びだす?
普通は課長か係長でしょ。
女の子がいいのなら
若くて可愛い子は総務にゴロゴロしているし。
磨かれたエレベーターボタンパネルに映る自分をチェック。
白いブラウスにグレーのベストとスカート。
長い髪をひとつにまとめた
少し背の高い
黒目がちな童顔女子が立っている。
落ちつけ雅!
部長に隠れて深呼吸を二度ほどすると
エレベーターの扉が開く。