王子な秘書とシンデレラな御曹司

大好きな大好きな人。

私はまだ覚えている
その柔らかな唇も
重なる肌のぬくもりも

クリスマスの夜の奇跡を忘れない。

「僕の傍にいて」
甘い声に溶けてしまいそう

いっそこのまま
溶けてその胸に崩れて
甘いキスを受け入れたい。

「僕は雅さんがいないと何もできない」

私を抱く手に力が入る。

「好きなんだ」

私も大好き
大好きだけれど

華子様の顔が頭に浮かんでしまう。

華子様
大金持ちのお嬢様で
行動がちょっと理解不能の所もあるけれど

優しくてこんな庶民の私の事を、親身に想ってくれていた。
私の気持ちを知っていて
クリスマスに自分のホテルを使って
副社長との夢の一夜を過ごさせてくれた。

愛人という手もあるって
華子様と啓司さんと清香さんと私の四人で暮らすって……すごいアイデアを持ってたっけ。

思えばあれは
身分違いの私の恋を気の毒に思っていたのだろう。

純粋で素敵な人。

私は華子様を裏切れない。
自分のせいで
誰かひとりでも傷付くのは嫌だから。


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