王子な秘書とシンデレラな御曹司

「今日の予定はですね」

『帰りたい』発言を無視して私は自分のパソコンを起動する。

なんたって新米秘書と新米副社長。
わからないことだらけ。
敵ばかりの職場で、部長の指示が命。

必死で内容を確認していると
後ろの方でやかましい音といい香りがしてきた。

「エスプレッソは大丈夫ですか?お砂糖入れます?」

副社長
それは私の仕事です。
どうか堂々と座っておくんなさい。

「気が利かなくてすいません。私がやります」

「いいんです。書類から目を離したくて」

切実な返事だ。

午後からの会議
各課から届く書類の確認
契約書のサイン
色んな人とのご挨拶……etc……。

本当だ……帰りたい。

昨日まで白衣を着て
顕微鏡を覗いていた人には辛い作業だろう。

でも
乗り越えなければ。

「どうぞ」
長い指がスッと伸びて私の前にカップを置く。

「ありがとうございます」

「竹下さんはコーヒーは好きですか?」

「はい。朝は時間がないので、インスタントに牛乳入れてカフェオレで本格的とは遠いけど好きです」

「そうですか。僕は大好きで研究所で豆から焙煎してました」

目をキラキラ輝かせて
副社長は隣のイスに座る。

「焙煎機を買いましてね。生豆をネットで買ってそこから始めるんですよ。焙煎しすぎるとコクはでますが苦みも出ますしタイミングが難しくて……」

副社長のコーヒー話は続く。

好きな事に関しては目がキラキラするタイプなのだな。

話を聞かずに様子を観察。
その情熱を、どうやって仕事に回そうか考えていると

「やぁ兄さん」

低めの鋭い声を部屋に響かせ

もうひとりの副社長がノックもなしに急に現れた。

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