王子な秘書とシンデレラな御曹司
「副社長」
「はいっ!」
なぜだろう。
私が呼ぶと副社長は緊張して身構える。
秘書にビビってどーすんだ。
情けないぞ。
「外見から変えましょう」
「はい?」
急に何を言う?って顔をして、副社長は私を見つめた。
私も彼をジッと見る。
悪くはないと思う。
背は高いし。細身だし。
目も澄んでいてまつ毛も長い
そのボサボサ頭と黒縁メガネをなんとかすれば……イケそうだな。
「髪はねてますか?朝、遅刻しそうになってチャリ飛ばしたので」
「チャリ?」
「僕、通勤は自転車なんです」
「え?だって重役スペースの駐車場に赤のジャガーが……」
「あれは弟ですよ。派手ですよねー」
って笑ってるし
いや笑われるのは
チャリ通勤のあなたですけど。
大企業の副社長がチャリ通勤かよ。
聞きたくなかった。
だからスーツもシワよってんのか。
こりゃダメじゃん。
もう……何かズレてるよ。
「人は見た目といいます。このお仕事は特にそうです。チャリ通勤をするのなら、チャリ用のスーツとお仕事用のスーツは分けて下さい。あとボサボサ髪をなんとかして下さい。それからメガネをビジネス用にして下さい!」
「はいっ!」
ガク―ンとテンション下がって来た。
頭を冷やそう
「ちょっと席を外しますね」
フラフラと狭い資料室を一度出る私。
背中で名前を呼ばれたけれど
振り返る気が起きない。
どっかで充電しよう。