王子な秘書とシンデレラな御曹司
「会社の電話から市橋理香にかけます」
下ろした受話器をまた戻し
市橋理香の携帯の電話を調べてかけてみると
『はい。副社長付きの秘書。市橋です』
社内の誰からともわからず
甘い甘い声を出していた。
すかさずスピーカーホンにして
副社長も息を飲んで耳を潜める。
「私よ。竹下 雅。あんたどこにいるの?」
『えー?竹下さん?あらどうしたの?もう着いた?』
弾んだ声が聞こえる。
こいつ……仕組んだな。
「今日の会食は12時半の予定でしょ」
心臓のドキドキが止まらない
誰か助けて。
『何を言ってるの?時間が変更になったのよ。11時からに変更。連絡したはずよ。今朝の伝達事項の書類にあるはず』
今朝の書類?
私は机の上の書類をバサバサと広げてみると……あった。
顔面蒼白。
私のミス?
秘書課から回ってきた山のような書類に一枚、ごくごく小さな文字でわかりずらく書いてあった。
いつも重要な要件はメールで届いてるのに
どうして……こんな。
副社長にその書類を見せてから
私は膝が崩れてしまい床に座り込む。
電話線のコードがちぎれそう。
『今日のような大切な場所に遅刻させるなんて最低最悪の秘書でしょう。総務にお帰りなさい』
時計を見ると
もう10時20分を過ぎていた。
『今から来ても遅刻よ。交通規制がかかっていて道路が混んでるわ。遅刻なんて欠席より恥ずかしいわよ。今日のお相手は10分前行動の方々なの。10時45分には到着しなきゃいけないわ。あらーあと25分しかない。忙しいから切るわね』
電話は切られた。
「竹下さん」
副社長の声が遠く聞こえる
そのまま倒れて
床に溶けてしまいたかった。