王子な秘書とシンデレラな御曹司
「これってママチャリ?」
「運命だと思います。いつもクロスバイクの自転車乗ってるんですけど、先週パンクして研究所でもらったママチャリ通勤してたんですよ。おかげで荷台もあって助かった―。スピード出しますよ」
副社長はスーツ姿のまま自転車に乗り、私に後ろに乗るよう指示をした。
ママチャリで行くの?
「細い路地を通るので、彼らより先に着くと思います。急ぎましょう」
そうか
交通規制の関係ない道を通ればいいんだ。
自転車だから細い道路も問題ない。
「はい」
私はヒールのまま荷台に乗る。
「しっかりつかまって」
「はい」
「飛ばしますから」
「はい」
副社長がペダルをこぎ
私は冷たい風を感じながら副社長の背中にしがみつく。
柔らかな
仕立てのよいスーツのジャケットに頬を寄せ
副社長の広い背中に身体を預ける。
温かい。
温かくて安心できる。
その背中で私は
自分のふがいなさに涙が止まらず
街の中をずーっと泣いていたのを
副社長は知っているのか知らぬのか
「大丈夫ですよ。間に合いますから」
必死でペダルをこぎながら
副社長は背中の私を励まし
その声を聞きながら
また私は涙を流していた。