王子な秘書とシンデレラな御曹司

「これってママチャリ?」

「運命だと思います。いつもクロスバイクの自転車乗ってるんですけど、先週パンクして研究所でもらったママチャリ通勤してたんですよ。おかげで荷台もあって助かった―。スピード出しますよ」

副社長はスーツ姿のまま自転車に乗り、私に後ろに乗るよう指示をした。

ママチャリで行くの?

「細い路地を通るので、彼らより先に着くと思います。急ぎましょう」

そうか
交通規制の関係ない道を通ればいいんだ。
自転車だから細い道路も問題ない。

「はい」
私はヒールのまま荷台に乗る。

「しっかりつかまって」

「はい」

「飛ばしますから」

「はい」

副社長がペダルをこぎ
私は冷たい風を感じながら副社長の背中にしがみつく。

柔らかな
仕立てのよいスーツのジャケットに頬を寄せ
副社長の広い背中に身体を預ける。

温かい。
温かくて安心できる。

その背中で私は
自分のふがいなさに涙が止まらず

街の中をずーっと泣いていたのを
副社長は知っているのか知らぬのか

「大丈夫ですよ。間に合いますから」

必死でペダルをこぎながら
副社長は背中の私を励まし

その声を聞きながら

また私は涙を流していた。



< 51 / 245 >

この作品をシェア

pagetop