王子な秘書とシンデレラな御曹司

目的の場所に到着した時

副社長は背中で息をし
足がもつれていた。
どこから見ても体育会系ではない。

「これお願いします」
驚くドアマンにママチャリを預け
中に入るとロビーフロアの遠くの方で
今日の相手側の人物がひとかたまりになり
ソファに座ってくつろいでいる。

時間を確認すると
10時40分
すごい20分で着いた。

しかも
社長や俺様御曹司より先に着いたなんて、スゴすぎる。

「ほらね」
副社長は私に微笑み
磨かれたガラスに映る自分の姿をチェックし、身だしなみを整える。

「雅さんはどこかで待っていて下さい。終わったら電話します。あ、携帯持って来ました?近くでお茶していてもいいですし先にタクシー拾って戻っていいですよ」

そう言われて
ふと思う。

会食の席に
初めて付いて来てしまった。
いつもなら『いってらっしゃいませ。無事に頑張って来て下さい』と、会社で見送り留守を守っていたのに。

市橋理香は俺様副社長にベッタリなので、どこでも一緒に行くけれど
私はこんなの初めて。

「いえお待ちしてます」

「わかりました。相手側も忙しい方なので一時間半ほどで終わると思います。では……あ!」

「はい?何か?」

「敏明や秘書の市橋さんに会っても、ケンカをふっかけないように」

ビクリ!

「黙って大人しくしてるように。約束」

副社長は右手の小指をスッと私に差し出した。
え?何これ?

「ほら指切り」

「はっはいっ」
私が小指を差し出すと
副社長は『約束だよ』と小指を絡めて笑い、背筋を伸ばして相手側の所へ向かって行く。

私は楽しそうに挨拶をする副社長の姿を確認し
彼らから見えない場所に腰を下ろし
大きく深呼吸。

間に合った……。

「よかった」

本当によかった。







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