王子な秘書とシンデレラな御曹司

色々とツッコミたいけれど
無事に間に合って
無事に終わった脱力感しか
今の私にはなかった。

「お疲れさまでした」

「どうやって帰りましょうか?みや……竹下さんは」
副社長は私の名前を取り消して
上の名字に言い直す。

「あ……私は……」

「『みやびさん』って素敵なお名前ですよね」

「そうでしょうか?」

「ばい。すいません、僕はずっと素敵な名前だなぁって思っていて、つい……名前を呼んでしまって。嫌な気持ちになってたらすいません」

申し訳なさそうに言われたので
私はブンブンと首を横に振る。

「大丈夫です。嫌な気持ちになってません」

「本当ですか?よかったー。じゃぁこれからも『雅さん』って呼んでいいですか?」

「え?あ、はい。お好きに呼んで下さい。副社長の呼びやすいように」

「いいんですか?ありがとうございます」
副社長は喜んでそう言った。

そんな事で喜ぶなんて子供みたいだなぁ。
微笑ましく思っていると

「それではですね、雅さんもよかったら僕の事を『けいじ』と呼んで下さい。呼び捨てオッケーです」

と、本気で言われた。


呼べるかっ!



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