王子な秘書とシンデレラな御曹司
その後
スーツ姿でママチャリを押す副社長と並び、私達は会社へと戻る。
「雅さんはタクシーで帰っていいんですよ」
「いえ。今回のミスは私の責任ですから」
「あんな小さい字でさりげなく書かれてもわかりませんよ。だっていつも変更内容はメールで届くから気付かないで当たり前です」
「でも見逃した私のミスです」
話せば話すほど落ち込んでしまう。
「それだけ敵視されるようになった……って思えばいいんですよ」
副社長は明るくそう言った。
「僕達の評判が良くなってきたから、敏明達は策略を練るんですよ。同じ土俵に立ったって認めたんですよ」
前向き発言。
「だから気にしないで下さい」
「……はい」
「雅さんの元気がないと僕は心配です。僕は雅さんが居ないと何もできないから」
「そんな事ないですよ」
「ありですよ」
副社長は自転車を停め
ジッと私の顔を見て優しく微笑む。
「自転車の後ろでずっと泣いてたでしょう」
うっ!
見破られてた。超恥ずかしい。
「僕が頼りないから、泣かせてしまった」
「違います」
細い路地裏
会社への近道
自転車でここを突っ走りながら
間に合わなかったらどうしようって
私は副社長の背中で泣いていた。
広く温かい背中で泣いていた。
そっと副社長の片手がスッと伸び
私の頭に大きな手がのせられる
「もう泣かせない」
子供にするように
頭をぽんぽんって撫でるように軽く手を置かれてしまい
なぜか私は
また泣きたくなった。