王子な秘書とシンデレラな御曹司
塔の上の孤独なる姫


うちの副社長の評判が上がってる。

そんな噂を聞いたのは
総務部の女子会だった。

総務の女子をなめたらアカン。
会社の全てを握っているのは総務の女子……いや、言いすぎですゴメンなさい。

玄米と野菜を活かした
身体に優しい料理を出すレストラン。
オープンキッチンから出来上がった料理は和・洋・中で種類も色々。ワインも色々。スイーツも色々。
絵本に出て来るような大きなラクレットチーズがトロトロ溶けてる美味しいお店での女子会。

重役室にポツリ飛ばされた私は浦島太郎状態。
世間の噂が入らないので話を聞いて驚いた。

「どこの課でも評判いいです」

後輩に聞かされてポテトを喉に詰まらせてしまった。

うちの副社長が?評判いいと?

書類の山で泣いてるうちの副社長が?

「課長たちも部長たちも褒めてます」

「まじかー?」
後輩のうっとりした声に叫ぶ私。

「提出書類の不備はそっと指摘してくれて怒らないし。仕事もやりやすくしてくれるし、下の意見も聞くし」

「顔もいいよね」

「コーヒーの知識がハンパなくて、コーヒー好きが集まってるんでしょう」

「そうそう。キラキラした目で語るってさ。可愛いじゃん」

「頭の回転も速いってね。さすが名門大学の博士号」

先輩後輩同期がうちの副社長を語ってる

って博士号?

「博士号持ってるの?うちの副社長」

「秘書のくせに知らないの?留学した先の大学院で取ったみたい。海外で幹細胞の研究してたらしいよ。そこに社長が現れてうちの会社の研究所に戻したんだって。すごい賢いよね」

そうなの?
そんなに賢いのに
なんであんなに残念な男なんだろう。
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