王子な秘書とシンデレラな御曹司

ウイスキー専門のショットバー
女二人
カウンターで語り合う図。

女同士の深刻な話に
男は不要。

その深刻な内容は
タケル王子の話。

「どうしてすぐ返事しない?あんたってバカ?」

はい。バカです。

「あんな優良物件ないでしょう!」

はい。ないです。

あぁマッカラン12年が美味すぎる。
このまろやかな甘さがたまらない。
優しい味に心の隙間が埋められた気分。

「顔よし。性格よし。仕事デキる。海外勤務。次男。完璧でしょう」

次男なのか。
恐るべしリサーチ
さすが総務の女。

「それとも他に好きな男がいるの?例の副社長とか?」

急にそんな話をされて
心臓がビクリと跳ねた気分。

「違う!」

琥珀色した液体を一気飲みし
次はジョニー・ウオーカーブルーラベルを指定する。
口当たりがいいので飲みやすいから要注意の品なんだけど、今日はなんだかジョニーが恋しい。
あぁジョニー
私の心を癒しておくれ。

ウイスキー大好き。
そうだ
私もあの部屋でウイスキー広げようか
コーヒーに勝てるかも……いや無理だなぁ。あのコーヒーおたくには誰も勝てない。

「何を迷ってんのよ」

親友の頼んだバランタインを横目で覗き、そっちも美味しそうだとふと思う。

明日の休日に感謝しながら
なんだか
とことん飲みたい気分。

「迷ってないけど今はダメ」

そう。今はダメなんだ。

「何が?」

「あのへタレた副社長を後継者にする使命があるの」

「それだけなの?」

「それだけって?」

「他に気になる男はいないの?」

「……いないよ」

「即答しろ」

いないよ……って思いながら
副社長の優しい顔と声を思い出す私。

どうしたんだろ
きっとお酒のせいだ。





< 59 / 245 >

この作品をシェア

pagetop