王子な秘書とシンデレラな御曹司
「申し訳ありません。私は違うのです」
姿と同じく声も可愛らしい。
「いえ、僕は見てます。あの豪邸に住んでらっしゃるのも知ってますし、ご家族でお食事をされてるのも見ております。スイスでもお会いしてます」
「私も見てます。あなたが麻生華子様に間違いありません」
責められたようにそう言われ
彼女は小さく首を横に振る。
違うの?人違い?
ってゆーんか
女の子が嫌がってるんだから
あんまし食らいつくのも見苦しいなぁ。
御曹司ってけっこう自己中?
「いつも正体を偽ってませんか?何か理由でもあるのですか?」
俺様御曹司がスッと出て来て彼女の前に立ち、逃げ場をふさいでしまう。
ちょっと嫌な感じ。
「そんな……」
「では名乗りを上げて下さい。僕達はあなたとお近づきになりたいんです」
プライドの高い御曹司達は遅れをとってなるものかと、我先にと彼女に詰め寄る。
輪が小さくなってきて
中心の彼女は怯えるような顔をする。
おい。怯えさせてどーすんだ。
「あ……あの。もっとあの仲良く、オープンに話をしま……」
うちの副社長が彼女をかばうように輪の中心に出たけれど、いとも簡単にひとりの体育会系御曹司につまみ出されて輪の外にゴミのように捨てられてしまった。
せっかくの勇気が台無し。
副社長は輪の中に入って彼女を助けようとするけれど、輪の中には入れず、ウロチョロするのみ。
やっぱり残念なヤツ。
その勇気は立派だった。
ホメてあげよう。
でもね
行動が伴わないと王子とは呼べない。
私は背筋を伸ばし
御曹司の隙間を狙ってスルリとその輪の中に飛び込んだ。