王子な秘書とシンデレラな御曹司

健はもう一度副社長に頭を下げてから扉の外へ出たので、私も慌てて後を追った。

「どうしてあんな事言うのよ!」

重役フロアで大きな声を出す私。

「どうしてだろな」
健は自分でも不思議って感じでポツリと言う。

「ひどいじゃない。あんなプライベートな話するなんて」

「お前の好きな男の前で?」

「健」

グイッと手を引かれ
そのまま応接室に引っ張られた。
両手首を痛いくらいに捕まれて壁に背中を密着する私。

目の前の健は王子様顔じゃなくて
ひとりの男であり
怖いくらい真面目な顔で私を見下ろす。

「嫉妬だよ。お前があの狭い部屋で男と過ごしてるって事に」

「だってそれは仕事でしょう。私が決めた事じゃないもの」

「わかってるから悔しいんだって」

健の手が緩み
真面目な顔が悲しい顔に変わってゆく。

「あの副社長。いいヤツだわ」

「うん」

大企業の広報部の出世頭は色んな人に会っていて、その人物がどんな人か見抜く力も素早く鋭い。

「お前の気持ちは変わらないのか?」

健の長い指がそっと私の前髪に触れてから頬に流れる。

「あいつが好きなのか?俺じゃダメか?」

きっとこれが健のファイナルクエスチョンってやつなのだろう。

最後の質問。


< 97 / 245 >

この作品をシェア

pagetop