王子な秘書とシンデレラな御曹司
健はもう一度副社長に頭を下げてから扉の外へ出たので、私も慌てて後を追った。
「どうしてあんな事言うのよ!」
重役フロアで大きな声を出す私。
「どうしてだろな」
健は自分でも不思議って感じでポツリと言う。
「ひどいじゃない。あんなプライベートな話するなんて」
「お前の好きな男の前で?」
「健」
グイッと手を引かれ
そのまま応接室に引っ張られた。
両手首を痛いくらいに捕まれて壁に背中を密着する私。
目の前の健は王子様顔じゃなくて
ひとりの男であり
怖いくらい真面目な顔で私を見下ろす。
「嫉妬だよ。お前があの狭い部屋で男と過ごしてるって事に」
「だってそれは仕事でしょう。私が決めた事じゃないもの」
「わかってるから悔しいんだって」
健の手が緩み
真面目な顔が悲しい顔に変わってゆく。
「あの副社長。いいヤツだわ」
「うん」
大企業の広報部の出世頭は色んな人に会っていて、その人物がどんな人か見抜く力も素早く鋭い。
「お前の気持ちは変わらないのか?」
健の長い指がそっと私の前髪に触れてから頬に流れる。
「あいつが好きなのか?俺じゃダメか?」
きっとこれが健のファイナルクエスチョンってやつなのだろう。
最後の質問。