落ちてきた天使
息が詰まりそうだ。
それぐらい嗚咽を漏らして、それでも皐月に聞いてほしくて必死に言葉を紡ぐ。
「そのあとっ、ママ達が…病院に来ることは、なかっ、た……」
すぐ戻って来ると言って病室を出たママが数時間経っても戻って来なくて、怒ってるんだと思った。
帰って来たらすぐに謝ろう。
今か今かと、病室のドアを穴が開くぐらい見つめ続けた。
担当の看護師さんは検温が無くても一人ぼっちの私の様子をちょくちょく見に来てくれた。でも、ドアが開く度に『帰ってきた!』って胸を高鳴らせて、毎回ママじゃないと泣きそうになった。
それでも、味気ない夕食を食べ終わった頃、ガララッと勢いよく開いたドアを期待を込めて振り返ると、そこには顔面蒼白のおばあちゃんとおじいちゃんが息を切らして立っていた。
病室に足早に入ってくると、私を抱き締めるおばあちゃんと、その後ろで涙を堪えるように唇を震わせるおじいちゃんに、幼いなりに言いようがない不安が押し寄せてきて。
『どう、したの……?』
体を震わせながら、ただ嗚咽を漏らすおばあちゃん。
『ねぇ……ママは……?ママは、どこ?』
『……あーちゃんには…ばぁばとじぃじが……いる、からね……っ』
そして、おばあちゃんの切れ切れの言葉に、私は初めての絶望を感じた。
「……あそこ」
いつもより重く感じる腕を上げて、ある方向を指差す。
この辺りでは有名は、事故が多発する“死神が存在する交差点”。片側三車線、大型トラックから軽自動車まで、多くの車が忙しなく走る国道だ。
「事故現場……相手の居眠り運転による信号無視だったって……」
私が入院していた総合病院から自宅まで帰るのに、その国道を横切らなければならない。
夜通し走り続けたトラックの居眠り。
真横から突進されたパパ達を乗せた車は、何回も回転して、原付バイク、自転車、対向車を巻き込みながら、やがて陸橋の太い柱にぶつかって止まった。
大きな事故だった。あの交差点で起こった事故の中で、過去最悪の死者数を出した。
それぐらい嗚咽を漏らして、それでも皐月に聞いてほしくて必死に言葉を紡ぐ。
「そのあとっ、ママ達が…病院に来ることは、なかっ、た……」
すぐ戻って来ると言って病室を出たママが数時間経っても戻って来なくて、怒ってるんだと思った。
帰って来たらすぐに謝ろう。
今か今かと、病室のドアを穴が開くぐらい見つめ続けた。
担当の看護師さんは検温が無くても一人ぼっちの私の様子をちょくちょく見に来てくれた。でも、ドアが開く度に『帰ってきた!』って胸を高鳴らせて、毎回ママじゃないと泣きそうになった。
それでも、味気ない夕食を食べ終わった頃、ガララッと勢いよく開いたドアを期待を込めて振り返ると、そこには顔面蒼白のおばあちゃんとおじいちゃんが息を切らして立っていた。
病室に足早に入ってくると、私を抱き締めるおばあちゃんと、その後ろで涙を堪えるように唇を震わせるおじいちゃんに、幼いなりに言いようがない不安が押し寄せてきて。
『どう、したの……?』
体を震わせながら、ただ嗚咽を漏らすおばあちゃん。
『ねぇ……ママは……?ママは、どこ?』
『……あーちゃんには…ばぁばとじぃじが……いる、からね……っ』
そして、おばあちゃんの切れ切れの言葉に、私は初めての絶望を感じた。
「……あそこ」
いつもより重く感じる腕を上げて、ある方向を指差す。
この辺りでは有名は、事故が多発する“死神が存在する交差点”。片側三車線、大型トラックから軽自動車まで、多くの車が忙しなく走る国道だ。
「事故現場……相手の居眠り運転による信号無視だったって……」
私が入院していた総合病院から自宅まで帰るのに、その国道を横切らなければならない。
夜通し走り続けたトラックの居眠り。
真横から突進されたパパ達を乗せた車は、何回も回転して、原付バイク、自転車、対向車を巻き込みながら、やがて陸橋の太い柱にぶつかって止まった。
大きな事故だった。あの交差点で起こった事故の中で、過去最悪の死者数を出した。