落ちてきた天使
当時はその場にいたわけでもないし、まだ話を聞いてもよくわからなかった。


だけど、それなりに大きくなって、再びあの事故の新聞記事を読んだ時、恐怖で身を震わせたのを覚えてる。


今だって、まるで自分が現場にいたかのように事故の情景が頭に浮かぶ。



「私があんなこと言ったから……だから、バチが当たったのかな……」



優しいママとパパと可愛い弟に向かって、自分の我が儘で『大嫌い』だなんて最低なことを言った私に、神様が向けた罰。


苦しくて、辛くて。
握った皐月の手を爪の跡が残ってしまいそうなぐらい強く強く強く握った。



「違う。彩のせいじゃない」

「でも、もし私が我が儘言わなかったらっ……」



すんなりと病院を出てれば、あのトラックに遭うこともなかった。違う未来になってたはずだ。


悲しげな表情で、声を震わせながら皐月は言う。



「……ずっと自分のせいだって思ってたのか?」



皐月の問いに、ふっと笑う。


次から次に浮かぶ“もしも”。


もしも、私が駄々を捏ねなければ。
もしも、私が快く送り出していれば。
もしも、私がもう少しいい子だったら。
もしも、私が風邪を拗らせて肺炎にならなければ。


思わずにはいられなかった。


誰も私を責めてくれなくて、その気持ちがどんどん膨らんでいった。



「ママとパパ、弟だけじゃないの……それまで元気だったおじいちゃんとおばあちゃんも、私を引き取ったせいで……」



おじいちゃんは認知症になってしまった。
おばあちゃんはその心労を抱えながら、私を育てるために老いた体に鞭を打って家事や内職をして、私が7歳の時天国に旅立った。




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