落ちてきた天使
私が心を開いたのは、引き取られて半年ほど経った頃だったと思う。


初めて『お父さん』『お母さん』って呼んだ時の二人の涙を浮かべた嬉しそうな顔は忘れない。



家庭内で上手くいきだすと、学校でも頑張ってみようかなって思えた。



転校初日、私に話しかけてくれた学級委員の児玉さゆりちゃんは、返事もしない塞ぎ込む私に半年もの間、毎日話しかけ続けてくれた。


いつも元気で、クラスの中心には必ずさゆりちゃんの笑顔があった。


私は意を決して、その日も話し掛けてくれた彼女に返事をした。



『彩ちゃん、おはよ!今日、昼休み一緒に遊ぼ』

『う、うん……遊びたい‼︎』



目をみるみる開かせた後、パアッと花が咲いたように可愛らしく笑った彼女。


嬉しかった。
心が踊った。


初めての友達、楽しい学校生活。


幸せな日々が始まると思ってた。



この時まではーー。





「昼休みにね、外に行ったの。何がしたいかって聞かれて、私は鬼ごっこがしたいって言った」



今日は新しいお友達の彩ちゃんがやりたい遊びをやろうよ!って、さゆりちゃんが提案すると、他の子達も二つ返事で賛成した。


私なんかが決めていいのかなって思いつつ、私の頭の中に浮かんだもの。


鬼ごっこは、私がずっとやりたかった遊びだ。
普通の人はなんで鬼ごっこ?って思うかもしれないけど、今まで一人ぼっちだった私は大人数でやる鬼ごっこなんてやったことがなかった。


混ぜてって言えれば良かったんだけど、そんな勇気も気力もなかった。外で友達とキャーキャー言いながら走り回ってる姿を、ただただ羨ましく思いながら見ていたんだ。



『鬼ごっこは……』と、誰かが何かを言いかけたけど、さゆりちゃんはそれを遮って『うん、やろっか!』といつもの笑顔で言った。


『え…?大丈夫?』と、また違う誰かが心配そうな顔をしたけど、『全然平気だよー‼︎』って彼女は答えた。


私は、久しぶりの高揚感でその会話の意味を考えることも出来ないまま、鬼ごっこはスタートした。




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