落ちてきた天使
さゆりちゃんが田舎の方に引っ越したと聞いたのはそれから数ヶ月後だった。



私はやっと学校に通えるようになっても保健室登校。最後は卒業式にも出席せず、特別に保健室で校長先生から卒業証書を受け取った。



そんな私を心配して、両親は私立の中学に通わせてくれた。

誰も知り合いがいない場所からの再出発。
でも、私のことを誰も知らないという油断が不幸を繰り返す原因になったのかもしれない。



「……書道部にその子はいたの」



絶対部活に入らなければいけない学校で、私は部員が一番少ない書道部を選んだ。


もともと書道は好きだったし、静かに、心を落ち着かせて書に集中してる時間は不幸を忘れることが出来る。


部員と話さなくたっていい。
筆を走らせてれば、時間は勝手に流れていくから。


でも、入部者は私だけだと思ってたのに、部活初日、顧問や先輩の前で自己紹介をする私の隣りに彼女ーー、岡山咲ちゃんはうきうきした様子で立っていた。


入る部活間違ってない?
そう聞きたくなるぐらい、場違いというか。
地味な印象があった書道部に、一輪の大輪が咲いたような、そんな感じの女の子だった。

落ちてしまいそうなほど大きい二重の目、ほんのりピンク色の頬と唇。
羨ましいぐらいに小さい顔は、同性の私でもドキッとする。可愛いと思った。


第一印象は活発で、サバサバしてそうな女子。
私とは住む世界が違う、日の当たる場所を歩くべき人だと。


眩しくて、すぐに惹かれた。


友達になりたい。


胸の奥底に閉じ込めたはずの欲がむくむくと顔を出して、私はとうとうまた欲に負けてしまったんだ。




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