偽悪役者
「お待ちしておりました。招待状をお預かり致します。」


「こちらの受付表にお名前の記入をお願い致します。」



午前10時50分、続々と受付を済ませた招待客が会場へと入っていく。


しかし、椎名は開場直前に静音が言った言葉が気になっていた。



今はバックヤードに控えている静音が、



「何があっても手は出さないで下さいね。」



静かにそう言ったのだ。



同級生も出席するのだから元カレでもいるんじゃないの、と橘がからかうと静音もそれに乗っかってふざけて返す。



ただ、椎名にはいつもの声と違って聞こえた様な気がしたが、開場時間になり確かめることは出来なかった。



「氷室のご令嬢が到着した。各自警戒を怠らないように。」



同窓会の雰囲気を壊したくないと岨聚から要望があったので、見える警護は受付手前で離れるようにプランを変更した。


それと同時に、脅迫状のことも知られないようにとのことだった。



普段より秘書やSPは数人付いている為、今の状態でもそこまで怪しまれることはない。


しかし、脅迫されて神経質になっている証拠なのだろうか、会場内では気心が知れた友達と居たいようだ。
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