好きだと言ってほしいから
 少し焦った様子の逢坂さんに、私の心臓はますます鼓動を速めた。耳元で聞こえる彼の低い声が、私の鼓膜を心地良く通り抜け、体が震える。

『今ちょうど終わって帰るところなんだ。麻衣からLINEが来てて……』

「あ、はい。今日はバスで帰ろ……」

『まだ部屋にいる?』

 一人で帰ることを伝えようとした私の言葉を遮って彼が訊ねた。彼には見えないのに私は首を振った。

「ううん。もう出てきちゃったんです。今バス停で……」

『もうバスに乗っちゃった?』

「まだですよ。でももうすぐ来ますから」

『俺の家の近くのバス停だよね。そこなら大丈夫かな……俺もあと五分ぐらいで着くからそこで待ってて』

「え?」

『迎えに行くよ。コンビニがあるだろ? そこに入ってて。外で待つなよ?』

 もう一度聞き返そうとしたときには通話は切れていた。ツーツーと通話が切れた音を聞きながら私は呆気に取られる。

 仕事を終えた逢坂さんが、今からここへ来てくれるらしい。彼は疲れた体をおしてやっぱり私を自宅まで送ってくれるのだろう。彼は優しい。そして、どんなに疲れていても私を部屋に泊めたりはしない。
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