生徒だけど寮母やります!2
『そうよ』
母は落ち着いた声で言う
瑞季は焦る気持ちを感じ取られないように、適当を装って質問した
『へー、そうだったのね。ハナちゃんのお母さんはどんな子?』
しかしその質問に、母は「んー」と首を傾げる
『どんな子って言われても.....私は会った事はないわ』
困ってそう返事をする結斗の母
瑞季は思わず
『え、何で?』
と尋ねた
『なんでって.....仔犬はハナだけじゃないでしょう?お母さんの犬は、お家で他の仔犬のお世話をしなきゃいけないから、月沼さんも連れては来れないわよ』
『あ.....そう?』
瑞季は母の言葉に納得したような、していない様な反応をする
そしてしばらく間を空けると、今度は母が
『でも、昨日は月沼さんが犬達とキャンプに行ったそうでね。ハナもたまにはお母さんの犬に会ったり川で泳ぎたいでしょうって、こちらで預かりますってハナを迎えに来てくれたのよ』
と言った
昨日、丁度結斗が帰省する時間とぴったり重なったハナの外出
やはりそれには、ハナを譲ってくれた月沼が関係していた
全く疑いもしなかったけれど、昨日ハナを受け取ったのが月沼だったとは予想外だ
瑞季は『ふぅん』と反応をした
『そうなのよ』
何も知らない母の、細くて綺麗な声がちょっと残酷だった
『そうなのね.....分かったわ。じゃあお母さん、お邪魔してごめんね』
瑞季は冷静を装って微笑む
『ううん、いいのよ』
そして微笑み返す母を見て、瑞季は部屋を出た