真夜中の恋人
タカヤの指先が触れているのは、ブラウスのボタンが二つも取れてはだけているわたしの胸元だ。

「……大丈夫、なんでもないの。ちょっと怖い思いをしただけ」

それだけ言って黙り込むわたしをタカヤは何も言わずに見詰めている。

堪えられなくなって、目を逸らしたのはわたしの方。
乱暴されそうになったなんて、タカヤに知られたくなかったのに。

「もう、離して」

「何をされた?」

「だから、何も……」

「ナツ」

タカヤの声は苛立っていた。

きっと、タカヤはわたしが話すまで、この腕を解いてくれないだろう。
わたしは諦めて、小さく息を吐いた。

「服の上から身体を少し触られただけ。運よく人が来てそれで逃げてきたの。本当よ。何もなかったから」


言葉にしてしまうと、力ずくで組み敷かれた感覚が蘇って胸が苦しくなる。

「もう、いいでしょ?」

「どこを触られた?」

止めて、思い出したくないの。だけど、タカヤは有無を言わさなかった。


「ここは?」

そう言って、わたしの唇に指先で触れる。

視線が交わると、タカヤの顔が近付いて。言葉を発する前に、タカヤの唇がわたしのそれと重なった。

「んっ……」

抵抗なんて出来るはずもない。
強引でもなく激しいわけでもないのに、翻弄されて何も考えられなくなる。


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