真夜中の恋人
初めて逢ったときから、その薬指に指輪はなかった。
だからといって、彼が独身だとは限らない。
帰る場所があるのだから、彼を待っている人が居るかもしれない。
そうでなくても、恋人と呼べる人はいるだろう。
だとしたら、わたしの存在は、彼にとって何の意味があるのだろう。
「ナツ」
「なに?」
「今夜は泊まっていこうかな」
「え?」
「迷惑?」
「ううん」と慌てて首を横に振る。
嬉しいなんて、言えないから。
綻びそうになる口元を誤魔化すように、ウィスキーを喉に流し込んだ。