真夜中の恋人

「さあ、行こうか」と微笑んで、タカヤはわたしの手を取った。

引き寄せられると、慣れないヒールの所為で、足元がふらついてしまう。
それを誤魔化すようにタカヤの手を離して一人で歩いた。

けれど、直ぐに躓いて、前を歩くタカヤの腕を掴んでしまった。

「ご、ごめんなさい」

慌てて離れようとすると、それを制するようにタカヤが言う。

「いいよ。今日はそのままで」

「え?」
腕を組んで歩くってこと?
そんなのダメよ。誰が見ているのかわからないのに。

さっと手を離して、タカヤ隣に並んで歩く。
だけど、少し歩くとまた躓いてしまって。結局は、タカヤの腕に掴まって歩くことになってしまった。

「買い直そうか?」

「ううん。ゆっくり歩けば大丈夫だから」

ヒールで満足に歩けない自分が恥ずかしかった。
タカヤもわたしを誘ったことを後悔しているかもしれない。

「タクシーを止めよう」

そう言って、タカヤが手を上げた。



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